現役日本語教師の日本語豆知識

「~うちで」と「~なかで」

公開日:2016.10.03 更新日:2023.04.26

「私は果物のうちで、マンゴーが好きです。」
と言われたとき、違和感を覚える方は多いのではないでしょうか。

日本人であれば、
「私は果物のなかで、マンゴーが好きです。」
と言う人がほとんどかと思います。

この「~うちで」と「~なかで」
日本語教育では、ほとんどの初級のテキストで「~なかで」が出てきますので、
外国人も「~なかで」をよく使います。
その後、中級以上のレベルで、「~うちで」を学習するのですが、これが出て
くると「~うちで」と「~なかで」の使い方の混乱が起きるのです。

どちらも範囲を表す時に使う言葉ですが、最初の「果物のうちで、マンゴーが
好きです。」より、「果物のなかで、マンゴーが好きです。」と言った方が自然
だと感じるということは、日本人は「~うちで」と「~なかで」を使い分けて
いる
ようです。

では、どう使い分けているか・・・というと、
ある時間や期間、数量の範囲を表す時は「~うちで」
それ以外は「~なかで」
というルールがあります。

例えば、
「1日のうちで、一番渋滞するのは午前8時ごろです。」
「1年のうちで、8月が一番暑いです。」
「300人のうちで、次の審査に進めるのは5人だけです。」
「スポーツのなかで、サッカーが一番好きです。」
「このカタログに載っている物のなかで、何が一番欲しいですか。」
というように。

初級で「~なかで」を学習する外国人は、「~うちで」というところを
「~なかで」と言ってしまう傾向がありますが、最近は日本人でも
「~うちで」ではなく、何でも「~なかで」で済ませてしまう傾向もある
ようです。

ですが、ある時に、「ん?何か変だぞ」と感じるその感覚を大切にし、
使い分けできるようになりたいものですね。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。