現役日本語教師の日本語豆知識

「~ている」は「~ing」ではありません

公開日:2016.04.18 更新日:2023.04.26

中学生の頃、英語の時間に「~ing」は「~ている」ですと習いましたが、
日本語教師になってから、「そんな単純なことではない」ということを
知りました。

皆さん、次の文の「~ている」について考えてみてください。

A)今、私はりんごを食べている
B)今日、私は白いジャケットを着ている
C)毎週土曜日にジムで運動している
D)私は5年前に大学を卒業している

これは全部「ている」を使った文ですが、A)~D)の「ている」は同じ意味
でしょうか?
うまく説明はできないけれど、この四つの「ている」は違う感じがする・・・
という方が多いのではないでしょうか。

日本語の「~ている」は、単純に「~ing」ということではありません
実は、次のような意味があります。

① その動作が進行中であることを表す(例文A)
② 動作が行われた結果の状態を表す(例文B)
③ 習慣を表す(例文C)
④ 過去の経験を表す(例文D)

私たち日本人は、今、どの意味の「~ている」が使われたかを毎日の会話の中で
瞬時に判断しています。
しかし、日本語を勉強する外国人はそうはいきません。

では、どうやって教えるか。
「時間の言葉」に注目させます。

③の習慣の「ている」は毎日、毎週、毎月・・など毎●」や「いつも」などの
繰り返しを表す言葉と一緒に
使います。
(「ジムで運動しています」だけだと、日本人でも今進行していることか、
習慣か分かりませんよね。しかし、「毎週土曜日に」をプラスすると、
「習慣だ」と言うことがわかります)

④の過去の経験は「過去」ですから、「●年前」とか、「去年」と言った過去を
表す言葉と一緒に
使います。

①は、「今進行している」ということをはっきりさせるために「今」を一緒に
使います。

②はちょっと特殊です。
例えば、「今、ジャケットを着ています」と言えば、ジャケットに袖を通して
いる様子をイメージしますが、「今日、ジャケット着ています」となると、
「ジャケットを着終わった後、その状態が続いている」ことを表します。

ですから、わざわざ「今日」などという「今」よりも長い時間を表す言葉を
入れますが、それよりも重要なのは、「ジャケットを着ました「ジャケット
着ています」という流れを実演し、「今、着ています」とは違う意味である
ことを理解させることです。
他にも、「立つ」、「座る」、「結婚する」など動作そのものは瞬時に終わって
しまう動詞の「ている」はこの②の意味として使われる
ことを理解させる必要が
あります。
(「私は結婚しています」というのは、今、婚姻届を出していることではなく、婚姻届を出した後の状態を意味していますよね。婚姻届を出す動作自体は瞬時に終わってしまいます)

普段、あまり考えずに使っている「ている」ですが、今週は『この「ている」は
どの意味なのかな?』ということを考えてみても、面白いかと思います。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。