現役日本語教師の日本語豆知識

ディズニーランドに 「多い人」が いました。

公開日:2016.03.07 更新日:2023.04.26

約1か月ぶりの更新です。
さぼっていたのではなく、実は、体調を崩し、
ブログの更新ができませんでした。申し訳ございませんでした。

さて、毎週月曜更新の「日本人が知らない日本語の仕組み」。
今日から復活!です。

今日は、日本人が知らない「形容詞の秘密」を紹介しようと思います。

「この時計は大きいです。」
「壁に白い時計がかかっています。」
「私は安い時計を買いました。」
など、「大きい・赤い・安い」といった形容詞は、「形容詞+です」の形で述部
に使ったり、「形容詞+名詞」の形で修飾語として使えます。

私たち日本語教師は外国人にこのルールを教えるのですが、そうすると、
下のような文を作る学習者がいます。

A)「ディズニーランドは 人が 多いです。」
B)「ディズニーランドに 多い人が いました。」

この文を読んだとき、日本人であれば、A)の「多いです。」は正しくても、
B)の「多い人」は違う誰でも分かるはずです。
しかし、外国人にとっては 「大きい時計、赤い時計、安い時計は正しいのに、
多い人はどうして違うの???」
なのです。

「多い」は形容詞の中でも注意が必要な形容詞なのです。
実は、「多い」は述語としては使えても、「多い+名詞」の修飾語には使えない
というルールがある
のです(注1)。

更に、「多い」の反対語の「少ない」も同様のルールがあります
(例: ○ 人が 少ないです。/ × 少ない人が 来ました。)

皆さん、ご存じでしたか?
私は、日本語教師になって、「多い人」、「少ない人」という間違いをする
学習者たちに出会い、初めて気づきました。
「多い」と「少ない」は特別なルールがある形容詞なんだ!と。

このルール、なぜか国語辞書には載っていません
日本人なら「多い人」なんて言わないのが当たり前だから、
載せないのでしょうか?
しかし、日本語を勉強する外国人にとっては大切なルールです。

ちなみに、どうして、使えないのか・・。すみません、理由はわかりません。
もし、ご存知の方がいらっしゃったら、教えてください。

(注1)
「外国人が多い店」というような使い方は、「多い+店(「多い+名詞)」の形
に見えますが、これは、「外国人が多い」という一つのかたまりが「店」を
修飾していますので、上の「多い人が います」の「多い人」とは違う文構造
です。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。