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「森」と「林」の違い

「先生、森と林の違いは木の数ですか。」

これは、漢字を学習し始めた外国人から必ず出る質問です。

こんな質問をされたら、日本人だって、「森=木が三つ」、「林=木が二つ」、
ということは、木が多い方が「森」で、木が少ないほうが「林」かな・・・と
考えますよね。

実は、ある時までは、私もそう考えていました。

しかし、TVで北海道の防風林を見た際に、「本当に木の数と面積なのか?」と
疑問を抱きました

木の数や面積を基準に考えれば、北海道の広大な大地に延々と続くあの木の
集まりは「森」ということができるレベルです。
しかし、私たち日本人は「防風森」と言わず、「防風林」と言います。
なぜか?

色々な国語辞書で調べましたが、どの辞書も「面積と木の数の違い」という
ような説明しかありません。
しかし、例示で載っている熟語の違いに気づきました。

例えば、「林」では「竹林/松林/杉林」という熟語が例として載っています。
しかし、「森」には「竹森/松森/杉森」なんて言い方はありません

ここに、「林」と「森」の使い分けのヒントがあるのではないでしょうか。

つまり、私たち日本人は
「林」=「ある同じ種類の木が集まっている所」 
と捉え、
「森」=「様々な種類の木が集まってる所」
と無意識の内に区別しているのではないでしょうか。

そう考えると、「色々な木が集まっている林」を言う時には、わざわざ
「雑木林」という言葉があるのに対し、色々な木が集まっているのが
当たり前な「森」については「雑木森」という言葉はないというのも、
理解できます。

更に、煙突がたくさん立ち並んでいる状態のことを「煙突の林」と表現し、
都会の建物(様々なタイプの建物)が密集している状態を「都会の林」では
なく、「都会の森」と表現するのも、理屈は通っています。

辞書の定義だけでは、わからないことも、実際にどう使っているのかを考える
と、日本人が無意識の内にどういう区別をつけているのかに気づき、面白い
ものです。

(余談)
林業の世界では、
「林」=「人の手が入ったもの」
「森」=「自然に生えているもの」
という区別をするそうです。

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