現役日本語教師の日本語豆知識

「~ことにする」と「~ことになる」

公開日:2015.12.14 更新日:2024.05.27

日本語を勉強する外国人が「???」と思う日本語の一つに「~ことにする」と「~ことになる」の違いがあります。

例えば、
A)私は彼女と結婚することにしました
B)私は彼女と結婚することになりました

このA)の文とB)の文、どう違うのでしょうか?

こんな質問をされると、日本人は「え~っと・・」と戸惑ってしまうのですが、私たち日本語教師は「同じところは同じ意味。違うところにその差がある。」
と考えます。

このA)文とB)文とで同じ部分は「私は彼女と結婚することに」ですから、
ここまではこの二つの文は同じ意味を持っています。
しかし、最後でA)は「しました。」、B)は「なりました。」と違う表現に
なります。

ということは、A)文とB)文の意味の違いは
「しました(する)」と「なりました(なる)」の意味の違い
を考えれば、分かるのです。

「する」には「自分の意志である動作、行為を行う」という意味があります。
一方、「なる」には「人為的ではなく、自然の成り行きで変化し、ある状態が
現れる」という意味があります。

ということは、「~ことにする」と「~ことになる」は、
「自分の意志で決めたこと」なのか、
「自分の意志とは関係なく、そういう結果になったのか」の違い

と言えます。

こういう説明をすると、外国人も「~ことにする」と「~ことになる」の違いが
理解できるのですが、それでも、彼らは「???」と思うことが多いのです。
なぜか?

それは、日本人は自分の意志で決めておきながら
「今度、結婚することになりました」と言うからです。
これを聞いた外国人たちは、「??この人は結婚したくないのかしら?」、
「周りの人に強制されたの?」と考えてしまうわけです。

自分で決めておきながら、「~ことになりました」というのは、
いかにも日本人らしい表現ではないでしょうか。


◆◇◆ 次回(12/21)予告 ◆◇◆
次回は、「日本人が知らない日本語の仕組み」の年内最後の更新です。
8月から色々なテーマで「日本語の仕組み」をご紹介してきましたので、
半年間の「まとめ」として、こんな問題を考えてみました。
ぜひ、皆さん、考えてみてください。

A)米洗う前蛍が一つ、二つ
B)米洗う前蛍が一つ、二つ
C)米洗う前蛍が一つ、二つ
D)米洗う前蛍が一つ、二つ

日本語の助詞の面白さを理解してもらうためによく使われる有名な俳句です。
さて、皆さん。このA)~D)の文の情景の違いを上手く説明してみてください。

答えは、来週月曜日に。

→ルネサンス日本語学院の法人向け日本語研修はこちら

日本語教師養成講座ならルネサンス日本語学院

この記事の監修者

監修者の写真

松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。