現役日本語教師の日本語豆知識

教室の扉を開けると、そこには・・・

公開日:2015.07.15 更新日:2023.04.26

暑いですね~。冷蔵庫の中で暮らしたい気分です。

さて、最近のブログは「言葉」に関する記事が続いたように思うので、
今日はちょっと違う角度からのものを・・・。

日本語教師になってもう20年になりますが、
たくさんの学習者に出会いました。
その中でも、大変印象的だった二人の学習者のエピソードをご紹介します。

エピソード1】 教室の扉をあけると、そこには・・・・
日本語教師になったばかりの頃です。
あるプライベートレッスンで、いつものように教室の扉あけると、
そこには・・・

忍者2

忍者が立っていました!!!
(画像はイメージですが、まさにこんな格好で・・・)
あまりの衝撃に声も出ず、固まる私。
そんな私にお構いなしに「先生、こんにちは~♫」と刀を振り回す
アメリカ人のJさん。

Jさんは忍者が好きで、
忍者の修行に日本に来た(そんなのどこでやっているんでしょうか?)のは
知っていましたが、まさかの展開でした。
彼は家からこの格好で来たのでしょうか・・・。

皆さん、想像してみてください。
教室で忍者」と二人っきりで日本語を勉強している場面を。
忍者が真面目に『先生、「~することにする」と「~することになる」は
どう違うのですか」などと質問してくるのです・・・。
後にも、先にも忍者」に日本語を教えたのはこの時だけです
おまけに、授業後には、Jさんに手裏剣や刀の使い方、忍者のポーズを
練習させられました・・。
(忍者の修行が終わって、帰国する時に、忍者の格好をしたJさんのブロマイド(サイン付き)を「先生、感謝の気持ちです」とくれました!)


エピソード2】「できない」とは言わせません

これも、あるプライベートレッスンでのことです。
私から見ると、もう「おばあさん」といってもいい年代の方に
日本語を教えていたのですが、
この方は韓国の梨花女子大学で教授をしていた方で、
できない」ということはありません!「やらない」だけです!』
色々なことにチャレンジする素敵な方でした。

ですから、授業の時に私が「私は ●●が できません。」なんてことを言うと、
次のレッスンが大変なことに・・・。

ある日、教室に入ると机の上に・・・
編み物

編み物セット一式が用意されていました・・・。
(写真はイメージですが、本当に全てのセット一式ありました)。
「先生は先週、編み物ができないと言っていましたが、
できないのではなく、やらないだけです!さあ、私が教えますから、
今から練習しましょう!!」と強制的に練習開始です・・・。
(もちろん、日本語の授業もしましたよ)
しかも、宿題まで出されて・・・。

彼女のおかげで、私は「編み物」も、「刺繍」も、「ビーズ細工」も
できるようになりました。
そして、何より
『「
やろう!」と思えば、「できるんだ」!』というとても大切なこと

教わりました。

二人とも、大変珍しい(?)タイプの学習者でしたが、
今までも、そして、これからも決して忘れることのできない学習者です。

→ルネサンス日本語学院の法人向け日本語研修はこちら

この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。