大阪校ブログ

技能実習生や特定技能生に日本語を教えるということ

2025.06.28

~"ことば"の奥にある、働く人たちの現実と想い~

近年、日本で働く外国人労働者の数は年々増加しています。
中でも「技能実習生」や「特定技能生」と呼ばれる方々は、建設・農業・介護・製造業などの現場で、日本の社会を支える重要な役割を担っています。

そうした方々に日本語を教えるということは、単なる語学指導にとどまりません。
"働きながら学ぶ"という特有の環境の中で、彼らの生活と密接に結びついたサポートが求められます。


教える現場のリアル

技能実習生や特定技能生の多くは、昼間はフルタイムで働いています。
授業は夜間や週末に設定されることが多く、疲労やモチベーションの低下も考慮しながら授業設計を行う必要があります。

また、「日本語がわからないと生活や仕事が成り立たない」という状況も少なくありません。
そのため、初級レベルでは「職場で使う指示語」「寮や病院で必要な表現」「買い物や交通に関する語彙」など、即効性のある日本語が特に求められます。


教材や指導法も工夫が必要

学習者の母語はベトナム語、インドネシア語、ミャンマー語など多岐にわたります。
文化的背景や教育歴もさまざまで、一斉指導では対応が難しいことも。

現場では、翻訳をうまく活用したり、実物やジェスチャーを駆使したりしながら、具体的で体感的な指導を心がけています。
「言っても伝わらない」と感じたら、図や写真を使うだけでも理解度が大きく変わります。


社会背景と支援の必要性

技能実習制度や特定技能制度には、制度的な課題や現場でのトラブルもたびたび報道されています。
日本語教育の現場でも、労働条件の違いや生活不安、人間関係のストレスなどが学習に影響を及ぼす場面を目にすることがあります。

私たち日本語教師は、学習者のそうした状況を正しく理解し、必要に応じて専門機関や相談先につなぐ「つなぎ役」でもあると感じます。
"ことば"を教えることは、彼らの「安心して働き、生きていくための力」を支えることでもあるのです。


教える側に求められる"視点"

技能実習生や特定技能生への日本語教育には、以下のような視点が求められます。

  • 「伝える」ではなく「伝わる」工夫

  • 本人の目的や背景に寄り添うこと

  • やさしい日本語と実用的表現のバランス

  • 文化の違いを受け止める姿勢


最後に:小さな一言が、大きな安心につながる

ある日本で暮らし始めた学習者とお話する機会があり、
「最初は何を言っているか、コミュニケーションを取り合えなくて怖く思ったけど、日本語を勉強してから、上司の言っていることが少しわかるようになって、こわくなくなりました」とお話してくれたことがあります。

教えることばが、その人の生活に小さな変化をもたらす。
その瞬間に立ち会えることこそ、日本語教師のやりがいであり、責任でもあるのだと思います。