外国人労働者への日本語教育の必要性と教育のポイント
公開日:2025.10.17 更新日:2025.10.22

監修者情報
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
自社で外国人労働者を雇用することになり、日本語教育を重要な課題として捉えている人事担当者様もいらっしゃるでしょう。
とはいえ、現場でどのように教育を実施すればよいのか、明確な指針を持てない企業もあるかもしれません。
そこで本記事では、外国人労働者への日本語教育の必要性を解説したうえで、教育の実践的なポイントをお伝えします。
外国人労働者の雇用にあたって、日本語教育の方針を定める際の参考にしてください。
外国人労働者に日本語教育は必要?
外国人労働者を受け入れる場合、日本語教育は不可欠であり、非常に重要です。
企業側が外国人労働者に日本語を教えることで、コミュニケーションが捗るようになれば、指示をきちんと伝えて理解してもらうことができるようになります。
また、企業や生活の中でのルールを理解してもらうことで、無用なトラブルや人間関係の悪化を防げるでしょう。
もちろん、外国人労働者が滞りなく業務を進行するうえでも、日本語教育は大前提であるほか、本人のモチベーションの向上といった観点からも必要です。
具体的な内容は、以下で詳しくお伝えします。
仕事がスムーズに進む
仕事を円滑に進めるためには、外国人労働者に業務上で必要となる日本語を習得してもらうことが大切です。
外国人労働者への指示や現場教育は、日本語で行うのが一般的です。
そのため外国人労働者の日本語の理解が十分ではない場合、認識に食い違いが生じてしまい、誤ったプロセスで業務を進行させる可能性があります。
そうなると、不備の修正に時間をとられ、業務効率の低下を招くこととなります。
言語の壁によるトラブルを未然に防ぎ、仕事をスムーズに進めるためには、外国人労働者の実務に支障が出ない程度の日本語を教える必要があるのです。
外国人労働者のモチベーションが高まる
外国人労働者に日本語教育を実施することによって、仕事に対するやる気を引き出す効果が期待できます。
仕事のモチベーションを高めるためには、具体的な目標と業務範囲を設定し、成功体験を積ませることが重要です。
その際、外国人労働者が日本語を習得していないと、「わからない」「できない」という失敗体験のみを重ねることとなり、仕事への前向きな気持ちを維持できません。
"できること"を増やし、実績を積んでもらうためにも、外国人労働者に対する充実した日本語教育が不可欠なのです。
外国人労働者の日本語教育の現状
前項では、外国人労働者に対する日本語教育の必要性について解説しましたが、教育環境が整っているかといえば、依然として課題が残っているのが現状です。
文化庁が実施した、"日本語教育実態調査"の令和4年度と令和5年度の報告を比較すると、その理由が明らかになります。
下表はその概要をまとめたものですが、これを見てもわかる通り、日本語学習者は増加しているのに対し、日本語の教育機関や施設は逆に減少しています。
【文化庁 日本語教育実態調査の報告内容(令和4年度・令和5年度)】
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令和4年度 |
令和5年度 |
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日本語学習者の数 |
219,808人 |
263,170人 |
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日本語教育機関や施設の数 |
2,764施設 |
2,727施設 |
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日本語教師の養成コースを持つ施設の数 |
741施設 |
726施設 |
|
日本語教師の数 |
44,030人 |
46,257人 |
外国人労働者に「日本語をもっと深く学びたい」という想いがあっても、通える範囲に日本語教育機関や施設がなければ、やむを得ず断念することもあるかもしれません。
とはいえ、日本語教師の数が増加しているのは明るい材料です。
"外国人労働者が日本語を学ぶ場所や機会"をいかに増やしていくかが、今後の課題といえるでしょう。
参照元:
文化庁「日本語教育実態調査 令和4年度 報告」p5
文化庁「日本語教育実態調査 令和5年度 報告」p6
外国人労働者が日本語を学び始める時期
当然ではありますが、外国人労働者が日本で働くうえでは、一定レベル以上の日本語の習得が不可欠です。
外国人労働者の多くは、職場でのコミュニケーションを円滑にするだけではなく、業務指示を正確に聞き取って滞りなく作業を進めるために日本語を学びます。
日本語の学習を本格的に開始する時期は外国人労働者によって異なり、母国で事前に学んでくる場合や、日本で就労を開始してから学ぶ場合があります。
それぞれのパターンで日本語を学習する目的に違いがあるため、以下で詳細を見ていきましょう。
母国で日本語を学ぶ方の場合
日本での就労を目標として、来日前に日本語を学ぶ外国人の方もいます。
これは、母国で暮らしているあいだに自分のペースでじっくりと日本語を学習し、来日後すぐに求職活動に移行できるようにするためです。
日本で働く前に、日本語に少しでも慣れておきたい外国人は、母国で日本語を学ぶ傾向にあります。
来日後に日本語を学ぶ方の場合
「日本人の日本語教師から、言語だけでなく文化や慣習についても学びたい」といった理由から、来日後に日本語の学習に取り組む外国人労働者も少なくありません。
企業においては、外国人労働者のこのような想いを汲み取り、日本語学習のサポートを推進していくことで自社への定着率が向上するでしょう。
外国人労働者の日本語のレベルを測る指標
外国人労働者の日本語能力を測る指標として、よく用いられるのが"日本語能力試験のレベル認定"です。
この試験はN1~N5までの5段階に分かれており、それぞれのレベルに応じて、日本語を"読む・聴く"能力が試されます。
N5の試験内容がもっとも易しく、数字が小さくなるにつれて難易度が高くなるように試験問題が作られています。
これらの区分のうち、外国人労働者が取得しているレベル認定を確認することで、日本語能力をある程度見極められるわけです。
ここからは、外国人労働者の日本語能力の目安を、NI~N5のレベルごとに具体的に説明します。
N1
日本語能力試験の最上級であるN1レベルに認定された外国人労働者は、幅広い場面で使われる日本語を理解することが可能です。
たとえば、論理的に複雑な文章や抽象的な文章を読んでも、その内容を理解できる程度の日本語読解力を備えています。
また会話の場面でも、話の流れや内容、論理構成などを詳細に理解し、要点を把握することもできます。
N2
N2レベルと認められた外国人労働者であれば、日常的な場面で使われる日本語を理解できるでしょう。
新聞や雑誌、コラム記事といった趣旨が明快な文章を読み取れるほか、テレビ・ラジオから流れるニュースの内容や登場人物の関係なども把握することが可能です。
また、自然に近いスピードでの会話であれば、話の流れを掴んだうえで内容を聞き取れるはずです。
N3
日本語能力試験における中級というべきN3の試験の合格者は、日常的に使われる日本語であれば、ある程度理解できるレベルです。
N1・N2レベルであれば新聞や雑誌の記事も理解できますが、N3レベルの外国人労働者には、難解な表現は言い換えて伝えないと概要を理解することは難しいでしょう。
また日常会話においても、話の内容や登場人物の関係は大まかに捉えられるものの、要旨を完璧に把握することはできません。
N4
N4レベルの認定を受けている外国人労働者は、基本的な日本語であれば認識することが可能です。
日常的によく目にする語彙や漢字が使用されており、なおかつ身近な話題について書かれた文章は一読して内容を把握できます。
会話をする際は、ややゆっくりと話すことで内容を理解してもらえるでしょう。
N5
日本語能力試験でもっとも易しいN5は、基本的な日本語をある程度理解できるレベルです。
ひらがなやカタカナ、日常生活で多用される漢字で書かれた、定型的な文章であれば読み取ることが可能です。
一方で会話の場面では、短くゆっくりとした口調でない限り、必要な情報を正確に聞き取れない場合があります。
職種によって外国人労働者に求められる日本語のレベルは違う?
外国人労働者に求められる日本語能力は、職種によって異なります。
たとえば、製造業や建設業といった比較的単純作業が多い職種においては、日常的な会話や業務上の指示を理解できれば問題ありません。
しかし、外食業や介護などの職種では対人コミュニケーションが非常に重要であり、より高い日本語能力が求められます。
ここでは、一部の在留資格と職種を例に挙げて、必要な日本語のレベルをお伝えしますのでご参照ください。
【在留資格や職種ごとに求められる日本語能力のレベルの例】
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在留資格 |
日本語能力 |
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特定技能 |
1号:N4以上 2号:規定なし |
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技能実習(介護職種) |
1年目:N4以上 2年目:N3以上 |
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技能実習(そのほかの職種) |
規定なし |
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技術・人文知識・国際業務 |
規定なし |
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EPA看護師・介護士 |
インドネシア:N4以上 フィリピン:N4以上 ベトナム:N3以上 |
上記のように、在留資格や職種によっては、N4以上の日本語能力が求められることがあります。
一方で、特に規定を設けられていない場合もあるため、外国人労働者に求められる日本語のレベルには職種によって大きな差があるのです。
外国人労働者への日本語教育の方法
外国人労働者を受け入れている企業にとって、「日本語を学んでもらうにはどんな方法があるのか?」といった点は気になるところでしょう。
ここからは、外国人労働者に日本語を習得してもらうための5つの方法を紹介します。
以下の内容を参考に、自社に合った方法をお探しください。
入社前に現地の語学学校に通ってもらう
採用面接や説明会の際に日本語能力の重要性を伝えて、入社前に語学学校への入学を促すのも一つの手です。
入社前は時間に融通が利くため、じっくりと日本語を学び、理解を深めてもらいたい場合に最適な方法だといえます。
また、外国人労働者が事前に基礎的な日本語を習得していれば、入社後の手続きや業務説明もスムーズに進められるでしょう。
働きながら日本語学校に通ってもらう
日中は業務に取り組み、仕事を終えてから日本語学校に通ってもらう方法もあります。
一部の日本語学校では、外国人労働者の学習の負担を考慮して、すでに就職している外国人労働者向けのコースを設けているため有効に活用したいところです。
なお、企業によっては、日本語学習の支援を目的に学費の一部を負担しているところもあります。
こうした取り組みによって外国人労働者が積極的に日本語を学んでくれれば、業務中の意思疎通が円滑になり、作業効率の向上が見込めます。
受け入れ企業が日本語研修を実施する
外国人労働者を受け入れる企業が日本語研修のカリキュラムを組み、実用的な日本語の教育を行うことも選択肢に挙げられます。
日常的に使う日本語のほか、業務上で多用する言葉を優先的に教えられるため、実務に直結した教育を実施できます。
ただし、自社内での取り組みとなると、研修の準備に手間がかかるだけではなく、不慣れな場合は教育プログラムの質が落ちてしまうかもしれません。
このような懸念がある場合は、自社完結型の研修にこだわらず、必要に応じて外部の日本語教師を招くこともご検討ください。
オンライン研修を活用する
eラーニングをはじめとするオンライン研修も、外国人労働者への日本語教育の方法として有効です。
インターネット環境さえ整っていれば、時間や場所を選ばず日本語教育を実施できるため、「外国人労働者の学習効率を上げたい!」という企業におすすめです。
オンライン研修の導入には一定の費用が発生しますが、一部の自治体や大学では、独自に製作した学習教材を無料で公開しているところもあります。
このような教材であれば、誰でも自由に閲覧できるため、必要に応じて利用するとよいでしょう。
独学で学んでもらう
日本語教師や企業の手を借りず、外国人労働者が独学で日本語の学習を進める方法もあります。
ただし独学の場合、自身の日本語のレベルに合わせて学習を進められる反面、モチベーションの維持が難しく、日本語を習得するペースに個人差が生じてしまいます。
特に外国人労働者をグループで雇用する際は、一人ひとりの日本語の習熟度にムラがあると業務に支障をきたしかねません。
こうした事態を避けるためには、できるだけ独学は避けて、社内で研修を実施する、あるいは外部の日本語教育機関のサポートを受けることを推奨します。
外国人労働者への日本語教育に関する話題
2020年、出入国在留管理庁と文化庁は、"在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン"とよばれる、書き言葉のやさしい日本語に焦点を当てたガイドラインを策定しました。
また2022年には、書き言葉にくわえて話し言葉についての留意事項をまとめた"在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン 話し言葉のポイント"も取りまとめています。
ここでの"やさしい日本語"とは、日本人が日常会話で使っている言葉を外国人にも理解できるように配慮した簡単な日本語のことです。
たとえば、書き言葉には難しい言葉を使用しない、また会話の際は短く切って話すことを意識するといった工夫で、やさしい日本語に生まれ変わります。
外国人労働者へ日本語教育を実施する際は、上記の2つのガイドラインを参照したうえで、できるだけわかりやすく伝えることが大切です。
参照元:
文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」
文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン 話し言葉のポイント」
外国人労働者に対する日本語教育のポイント
前項でお伝えした2つのガイドラインを踏まえて、ここからは、自社で外国人労働者に日本語教育を行う際に押さえておきたい5つのポイントを紹介します。
ポイント①伝えたいことを簡潔にまとめる
外国人労働者に日本語を教える際、まず念頭に置きたいのは、ご自身が伝えたい情報を整理したうえで話の内容を簡潔にまとめることです。
その際、「このくらい話せば伝わるだろう」と思い込みをもたないことが大切です。
日本人同士の会話では、言葉を省略したり、間接的な表現を使ったりすることがよくありますが、この伝え方だと外国人労働者には話の内容が正確に伝わりません。
シンプルな言葉を割愛せずに使い、できるだけ端的に話すのがポイントです。
ポイント②カタカナ語に注意する
カタカナ語を使用する際は、原語と意味や発音が異なるものが多数あるため注意が必要です。
ただし、パンやペットボトル、アンケートといった和製英語のほか、バスやガス、テレビなどの外来語は、これ以外に適切な日本語がないため使用しても問題ありません。
「外来語の言い換え案がすぐには浮かばない......」という方には、独立行政法人国立国語研究所が作成した『「外来語」言い換え提案』を参考にすることをおすすめします。
こちらには176単語の言い換え提案が掲載されているので、お困りの際にはぜひご活用ください。
参照元:独立行政法人国立国語研究所「「外来語」言い換え提案」
ポイント③わかりやすい日本語を使う
外国人労働者に日本語教育を行う際は、二重表現や難しい言い回しをせず、極力わかりやすい日本語を使うよう意識しましょう。
たとえば、「~ないことはない」「~以外は必要ない」などの二重に否定する表現を用いると、外国人労働者は混乱してしまうかもしれません。
また、回りくどい言い回しは外国人労働者にとって理解するのが難しいため、できるだけ簡易な表現で直接的に伝えることが大切です。
一例を挙げると、「休日のお手続きはなるべく避けてください」という言い方ではなく、「平日にお手続きをしてください」としたほうが、より伝わりやすくなります。
ポイント④言葉以外の伝え方を工夫する
日本語の習得に苦戦している外国人労働者に対しては、言葉だけに頼らず、ときには視覚的なアプローチも必要です。
資料や写真、図などを活用することで説明を簡略化できるほか、外国人労働者にとっても、より印象に残りやすいはずです。
特に作業手順や事故防止に関するマニュアルなどは、イラストや動画を用いて情報を正確に伝えましょう。
ポイント⑤話を聞く態度を示す
外国人労働者が日本語で何かを伝えようとしているとき、相手の話をきちんと聞く姿勢を見せることも重要なポイントの一つです。
まずは落ち着いて話を聞き、外国人労働者が緊張している様子なら、笑顔で相槌を打つなどして場の空気を和らげるよう意識してみてください。
「あなたの話をしっかり聞いていますよ」「内容を理解していますよ」という耳を傾ける態度を外国人労働者に示して、安心感を与えることが大切です。
外国人労働者に日本語を教える際に資格は必要なのか
企業側が主体となり、外国人労働者に日本語教育を実施する際は、特定の資格は必要ありません。
そのため、自社の社員であれば誰でも教育に参加できます。
一方で日本語教師のための資格として、登録日本語教員があります。この資格は日本語学校などでの日本語を教えるための資格ですが、社内で継続的に日本語の研修を行うために社員が取得することを検討する場合や、外部講師を研修担当として依頼する場合などにひとつの基準として考えることができます。
外国人労働者への日本語教育は熱意と工夫をもって取り組もう
今回は、外国人労働者への日本語教育の必要性と、教育の実践的なポイントを紹介しました。
外国人労働者に対する日本語教育は、業務の効率化や本人のモチベーションの向上に寄与するものだけに、受け入れ企業には熱意と工夫が求められます。
日本語教育を実施する際は、文化庁が策定した"やさしい日本語"を参考にして、外国人労働者に寄り添った対応をとるよう心がけましょう。
「教育のポイントはわかったけど、自社での日本語教育に不安がある......」という人事担当者様は、【ルネサンス日本語学院の外国人社員向け日本語研修】をご利用ください。
専任の担当者がお客様の不安や疑問にお答えし、効率的な日本語学習の実現に向けて伴走いたします。
この記事の監修者

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格
《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。
《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。
《監修者からのコメント》
日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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